ぼくは学校のバザールに出かけた。
この日だけはあの重苦しい質感の校舎を学生や教師によって飾り付けられているので
外見は空しいほど拙い飾りだが。
中に入ると彼らのデコレーションに対する気合が感じられる。
いつもなら嗅ぐ事のない甘いお菓子の匂いや急いで作った看板のペンキの匂い
各教室は色とりどりの飾りをつけ華やいでいた。
ぼくは親しい友人とそこを歩いていた。ぼくらがはじめてはいるその学校は別世界だった。
ぼくらは高校生だったので家の近くの大学はただ見えるだけの大きな建物でしかなかったのだ。
そのひ 僕らは女の子の友達の誕生日にケーキをそこで買うことにしていた。
その大学内では毎年、街の有名パティシエが洋菓子を作って出展する事が恒例になっていた。
そして、ぼくらが先輩から聞いた情報によると頼めば、いつもは作っていない飛び切り美味しい
洋菓子を作ってくれるということだった。
ぼくらはケーキも大切だったけどそれよりもそのヒミツのお菓子が気になっていた。
僕らは夕方近くにそこに向かった。朝や昼間はそのパティシエは普通のお客の注文に
対応したりと忙しくて特別な注文を聞いてはくれないと知っていたから。
ぼくらがそこへ着いた時には周りはもう薄暗くなっていた。
調度、パティシエも暇そうにしていたので。僕らはケーキを注文してからおもいきって
『もうひとつおねがいがあって。』
と言いにくそうにしているぼくらをみて彼は明るい笑顔で
『わかったよ。すこし、時間が掛かるから2,3時間経ってからまた来なさい。』
といって注文した事を照明するレシートを僕らに渡した。
僕らは構内をぶらぶらする事にした。
すると友人が
『あのさぁ~、自分の嫌なところってある?』
と聞いてきた。
突然の質問に戸惑ったがぼくはこたえなかった。
友人は僕に
『きみはとくにないんだろうねぇ、いつも落ち着いていて自信がありそうだもの』
と寂しそうに言った。
僕は彼をみて
『そんなに暗くなるなよ。いくら日が傾いてきたからって君の心まで暗くなる事はないだろ
さぁ、君は星が好きだっただろ。なら、あそこにあるプラネタリュウムに入ってきなよ。
だいたい所要時間が30分って書いてあるからそれまで俺は違うところを回ってくるよ。
おれは、ああいうのは趣味じゃないから。じゃあな』
ぼくは彼の視線を背中に受けながら歩き角を曲がった瞬間走った。
そして、階段を登り続けひとけのない最上階へ
暗い廊下誰もいない教室ぼくは教室の壁を背に崩れこんだ。
そして、泣き始めた。
『なんだって、あいつはオレにこんなに酷い事をいうんだ。自分の嫌なところがないだろうだって!
寧ろ、好きなところなんてひとつもないって言うのに。でも、そんなこといっていてもしょうがないだろ
有りすぎてしゃべるだけでも長すぎてあほらしすぎて。だから、だからおれは自分の悲しい部分は
口にしないで世間の一般的な不満だけを外に吐き捨ててるだけなのに。こんなに、こんなに小さな
おれでどうしろというんだ。闇がおれの体を無視して心だけを侵食し始めるような恐怖感に襲われ
ながらそこに崩れ落ち縮こまり必死で誰も見ていないそのばしょで僕は僕の涙を隠し続けた。
そして、僕は友人のもとへ戻った。いつもと変わらない笑顔で
そして、あのパティシエのところに行った。
そこにはもう、あのひみつのお菓子があった。
それはとんでもなく美味しくてぼくらは夢中になって食べ続けた。
それはなにかを紛らわすための事だったのかもしれない。